「各店の水道光熱費は判明しているが、どの店舗から見直すべきか分からない」「各店から検針値が届いた後、請求書の作成完了までに何度も転記作業が発生している」。多店舗の運営では、全店の正確なデータ収集・集計だけでも難易度が高く、運営改善のための判断に繋げるのに一苦労という状況があります。
改善の出発点は、店舗 / 個別のメーター / 対象期間といった必要データを正確に収集し、本部ですぐに使える形に揃えること。請求金額と使用量も個別に管理してグラフで把握すれば、費用増加の調査や店舗間の比較を進めやすくなります。
本記事では、自社店舗のコスト管理および入居テナントへの検針・請求という2つの業務について、課題と改善手順を紹介します。
多店舗展開企業の水道光熱費管理には2つの業務がある
チェーンストアの本部では、まず何のためにデータを集めるのかを整理します。自社が負担する費用の見直しと、入居テナントへの請求では、必要な情報や確認する担当者が異なります。
| 比較項目 | 自社店舗のコスト管理 | 入居テナントへの検針・請求 |
|---|---|---|
| 目的 | 使用量と費用を把握し、改善する | 使用量を確定し、請求する |
| 場面の例 | 飲食店、フィットネス施設、小売店 | 店内にテナントを持つホームセンターや総合スーパー |
| 必要な情報 | 店舗別の使用量、費用、対象期間、営業条件 | メーターとテナントの対応、検針日時、指示値、料金計算の条件 |
ショッピングセンター(SC)に入居し、施設側から水道光熱費の請求を受ける店舗は、自社の費用を管理する側に当たります。
この区分は企業を二分するものではありません。自社売場の費用を管理しながら、店内のテナントにも請求する企業は、両方の業務を持ちます。
自社店舗の水道光熱費管理で起きやすい3つの課題
店舗ごとの違いがわからず改善の優先順位を決められない
全店の合計額だけでは、調査を優先すべき店舗を絞り込めません。店舗別の金額がそろっていても、金額の大きい順に並べるだけでは判断しにくい面があります。売場面積や営業時間、業態が違えば、必要な電気・ガス・水道の量も変わるためです。
まずは同じ業態や近い営業条件の店舗をまとめ、前年同月との比較や、面積・営業時間などに対する使用量を確認します。飲食店なら客数、シャワー設備のある施設なら利用者数など、使用量と関係の深い指標を選ぶことも考えられます。
例えば、売上が減った店舗では、使用量が変わらなくても水道光熱費の売上比率は高くなります。比率だけで現場の無駄と判断するのではなく、金額、使用量、営業条件を一緒に確認すると、実態をつかみやすくなります。
東京都の本部向け対策メニューでも、各店舗の使用量を収集し、店舗別や単位面積当たりの値を整理して、分析結果を店舗へ返す手順が示されています。全店舗の順位がわかる形での提示は必ずしも良い方法ではない、とも注記されています。東京都の対策メニュー(対策番号A301)
比較の目的は、確認すべき店舗と項目を見つけることです。改善余地のある店舗を絞り込めれば、巡回時間や設備更新の予算をどこに使うか検討しやすくなります。
費用が増えた理由や、省エネ・節水の効果を判断しにくい
請求金額が増えても、使用量が増えたとは限りません。料金単価や基本料金、調整額の変化によって金額が動くこともあります。最初に金額と使用量を分け、次に請求の対象期間や営業日数を確認すると、変化の要因を切り分けやすくなります。
月次の請求書は、月ごとの費用と使用量の推移を把握する資料になります。ただし、月間合計だけでは、営業時間中に増えたのか、閉店後も使用が続いていたのかまではわかりません。原因を調べる際は、目的に応じた間隔で取得したデータと、現場の運用記録を照らし合わせます。
省エネ設備や節水器具を導入した後も同様です。導入前後の金額だけを比較すると、料金改定の影響が混ざります。使用量で比較する場合も、気温、客数、営業時間などの変化を確認しなければ、設備による効果を切り分けにくくなります。
そこで、対策を始める日と変更内容を記録し、比較する期間と指標を先に決めておきます。例えば、飲食店で水の使用量が増えた場合は、客数の増加、仕込みや清掃方法の変更、設備の不具合などを順に確認します。増加した期間と使用量を示せば、店舗から具体的な状況を聞き取りやすくなります。
データは原因を探る手がかりです。使用量の変化を見つけた後に現場へ確認することで、次の改善につながります。
異常への気づきと店舗へのフィードバックが遅れる
水道料金の請求を見て初めて、通常より多くの水を使っていたことに気づく場合もあります。月ごとの確認に加え、用途に合った頻度で使用量を見られるようにすると、変化に気づく機会を増やせます。
例えば、閉店後の使用を確認したいなら、閉店前後や夜間の変化を捉えられるデータが必要です。通常使わない時間帯の使用が続けば、清掃や設備の運転予定を確認し、説明できない場合に漏水などを調べます。夜間に値が増えたという情報だけでは、漏水とまでは言い切れません。
現場への共有は、データを送って終わりにならないよう、本部は調査対象を選び、エリアマネージャーは他店との違いを確認し、店長は営業や清掃の状況を振り返る、といった役割を決めておきます。
店長には、どの期間に何が変わり、何を確認してほしいかまで伝えます。確認結果を残しておけば、本部と店舗の間に改善の記録が蓄積していきます。
テナントへの検針と請求はデータ取得から帳票作成まで整える
店舗での検針と本部での請求の間に集計や転記が発生する
テナントへの請求は、検針、使用量の算出、料金計算、請求書作成までが一連の業務です。読み取りを効率化しても、本部に手入力が残れば、締め日の負担は減りにくくなります。
店舗ごとにメーター名や提出様式が違うと、数字とテナントの対応を毎月確認する手間が生じます。検針日がそろっていない場合は、請求対象期間との関係も整理することになります。
また、積算メーターの指示値と、請求対象期間の使用量は別のものとして扱います。前回と今回の差分を用いる場合は、倍率の設定やメーター交換の有無も確認し、例外が担当者の記憶だけに残らないよう記録しておきます。
読み違いや転記ミスは請求額に影響するため、元の指示値、取得日時、使用量の計算過程を後からたどれる形にしておきます。料金計算の条件や入退居の変更も、請求前に確認できる運用にしておくと、請求の誤りを防ぎやすくなります。
コーナン商事の事例に見る業務全体の見直し
ホームセンターなどを展開するコーナン商事の公開事例では、各店舗が検針値の取得と使用量の計算を行い、開発管理グループがテナントへの請求書を発行していました。同社が求めていたのは、現地での読み取りから、自社の請求書形式への出力までをつなぐ仕組みです。
導入効果について、同社の松浪様は次のように述べています。
請求書の紐付けまでしっかり出来たというのは大きいですね。あとは、不要な業務の整理が出来たという点もありますね。
請求に使っていなかった一部のメーターの検針も見直されました。検針の自動化を、帳票へのデータ連携や業務の棚卸しまで含めて進めた事例です。コーナン商事の導入事例
所属・発言内容は、事例が公開された2025年4月時点のものです。
検針するメーターとデータの用途を棚卸しする
コーナン商事の事例で挙げられた「不要な業務の整理」は、自動化の前に自社でも進められる作業です。検針対象の一覧には、過去の業務を引き継いだまま、現在の用途が明確でないメーターが残っていることがあります。
まず、各メーターがテナント請求、自社の使用量管理、設備の状態確認のどれに使われているかを整理します。用途ごとに、必要な取得頻度と確認する担当者も異なります。
| 用途 | 必要なデータの例 | 主に確認する担当者 |
|---|---|---|
| テナント請求 | 検針日の指示値、対象期間の使用量、料金条件 | 請求担当 |
| 自社の使用量管理 | 月次の使用量、面積・営業時間などの比較条件 | 本部の管理担当、エリアマネージャー |
| 設備の状態確認 | 時間帯別の変化、異常の有無 | 設備担当、店長 |
請求に使っていないメーターでも、別の管理目的があればデータの取得は必要です。逆に、どの用途にも当てはまらないメーターは、検針を続ける理由を担当者と確認します。この棚卸しの結果が、取得頻度と方法の判断材料になります。
本部で使えるデータを整える4つのステップ
共通する課題は、店舗・メーターごとのデータが必要な頻度や統一された形式でそろっておらず、比較や請求に使いにくいことです。次の順序で整理すると、必要な情報と減らせる作業が見えてきます。
1 店舗とメーターと管理目的を対応づける
店舗番号、メーター番号、計量対象、用途、担当者を一覧にします。建物全体のメーターとテナントごとの子メーターを区別し、集計時の重複も防ぎます。SC入居店では、施設側から取得できる明細と、メーターの管理者を確認しておきます。
2 項目と期間と単位をそろえる
費用と使用量は別項目にし、対象期間と単位を統一します。比較に使う面積や営業時間も添え、データが未着の場合はゼロではなく未取得として扱います。数字だけでなく、その数字がどの範囲を表すかまで残しておくと、後から比較しやすくなります。
3 目的に合った取得頻度と方法を決める
月次の予算管理、テナント請求、夜間の使用確認では必要な頻度が異なります。まず請求書や供給事業者、施設管理者から得られる情報を確認し、不足するデータの取得方法を検討します。既設メーターを利用する場合は、型式、設置場所、通信環境や管理者との調整事項を確かめます。
4 確認と共有の担当者を決める
データの欠落を誰が確認するか、変化を見つけたら誰に連絡するか、請求前に誰が照合するかを決めます。最初は一部の店舗で運用し、確認作業や転記がどれだけ減ったかを見てから展開すると、全店共通の手順を整えやすくなります。
導入前に確認しておきたい項目は次のとおりです。
- 店舗とメーター、管理用途が対応している
- 対象期間、単位、取得日時が記録されている
- 店舗比較に必要な営業条件がそろっている
- データの欠落や異常を確認する担当者がいる
- 請求に使うデータと計算条件を照合できる
多店舗管理を支援するA Smartの機能
A Smart(エースマート)は、対応する既設メーターに端末を後付けし、1日1回や毎時など、設定したスケジュールで検針値を自動取得します。取得データはCSV形式で一括ダウンロードできます。カスタム帳票の出力や、オプションのAPI連携を利用することで、店舗から本部への転記を減らす運用も可能です。長時間の連続使用や異常値を検知した場合に、管理者へ通知する機能も備えています。
対応するメーターの型式や設置環境には条件があります。詳しくは、機能と仕様、対応メーター・設置環境をご確認ください。
店舗別データを比較と業務改善につなげる
多店舗の水道光熱費管理は、管理目的を決め、店舗別のデータをそろえ、確認と共有を続けることから始まります。テナント請求がある場合は、検針後の計算や帳票作成まで含めて見直す対象になります。
次回は省エネ法をテーマに、本部が押さえておきたいエネルギー使用量の集計範囲と必要な情報を整理します。
既設メーターの活用をご検討の方は、対応可否やデータ収集方法についてご相談ください。